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No.8 ダイヤカット缶


イメージ:ダイヤカット缶
缶チューハイとして
商品化され「グッド
パッケージング賞」
を受賞
(画像提供:キリン
ビール株式会社
私たちがいつも飲んでいる缶コーヒーや缶ビールなど飲料用の缶には、見えないところでさまざまな技術が用いられています。

飲料用缶にはいくつかの種類があります。コーラやビールなどの炭酸飲料や、スポーツドリンクなど窒素ガスを一緒に封入する飲料には、缶にかかる内圧に耐えるために缶底をドーム状にくぼませた「陽圧缶」が用いられます。コーヒーや果汁などの内圧がかからない飲料は、缶の内圧が外気圧より小さいため、缶底が平らな「陰圧缶」が用いられます。また、製造方法からは、上ぶた、胴、底ぶたをつなぎ合わせた3ピース缶と、底と胴が一体成型された2ピース缶に分けられます。さらにスチール缶やアルミ缶など素材のちがいでも分けられます。

お酒好きの方はご存知かもしれませんが、缶チューハイに「ダイヤカット缶」とよばれるアルミ缶があります。ダイヤカット缶の胴の部分には、トラス(三角形の骨格構造)を立体的に組み合わせた、切子細工のような独特の形の加工がほどこされています。そしてふたを開けると、胴にダイヤの形状がくっきりと現れます。
イメージ:NASAラングレー研究所
ダイヤカット缶のアイディアが
生まれたNASAラングレー研究所
(画像提供:NASA)
イメージ:ダイヤカット缶
陽圧ダイヤカット缶
左側:開栓前の内圧がかかった状態、
右側:内圧を除去してダイヤ模様が現れ
たもの(資料提供:東洋製罐株式会社

ダイヤカット缶に用いられている形状は「PCCPシェル」(Pseudo-Cylindrical Concave Polyhedral Shell)とよばれ、宇宙工学の研究から生まれたものです。1960年代にNASAのラングレー研究所で日本人研究者(三浦公亮氏)が行った、円筒形の構造体に力が加わって生じる変形パターンの研究。そのアイディアが、20年以上の時を経て缶のデザインに応用されました。

ロケットや航空機の設計では、強度を保ちつつ極限まで軽量化することが求められます。同様に、強度を損なわずに軽量かつ最薄の陰圧缶を生み出す必要に迫られた飲料缶の開発者が、試行錯誤の末にたどり着いたのが、このPCCPシェル構造でした。過去に製造された陰圧ダイヤカット缶は強度を損なうことなく従来の3ピース缶に比べて30パーセントも軽量化することに成功したといわれます。

現在、缶チューハイとして商品化されている陽圧ダイヤカット缶は、PCCPシェルのもう1つの特徴である「等長変換」の機能を応用しています。「等長変換」は、折り紙に代表され、平らな紙が折ることによって鶴のような立体に変化し、折りを解くとまた平らな紙に戻ることをいいます。「プシュッ」と缶を開けた時に浮かび上がるダイヤの模様は、この機能によるものなのです。



ISASニュース No.258 :考証:チューハイ缶と宇宙研の関係

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