非常時にエネルギーを供給する
厳しい環境にも強い蓄電装置

従来、急速充放電用途限定だったキャパシタをJAXAの電圧均等化制御技術により、長時間電力バックアップが可能な無停電電源装置を開発しました。
また、交流出力可能な蓄電源装置も開発しました。

【商品化企業】
・日本蓄電器工業株式会社
※ 詳細情報又は購入については、商品化企業にお問い合わせください。

ライセンス(2009年度)

<特許>電圧均等化制御技術

●2直列・2並列以上の蓄電セルにより構成される蓄電モジュール内の各蓄電セル電圧をシンプルなスイッチ構成で均等化する技術
●キャパシタモジュールを構成するキャパシタの充放電時のばらつきを防止しつつ、出力電圧変動を任意範囲に制御する技術
●特別なモジュールを用いずに低損失、低ノイズで直流、交流を出力することを可能とする装置技術

応用

●キャパシタとスイッチのみのシンプルな構成で「蓄電」と「均等化」が可能となる。
●DC-DCコンバータを介さず中間タップ付き蓄電モジュールのみを用いて、出力が不安定な自然エネルギー用蓄電源から最大の電力を得ることが可能となる。
●「均等化」回路のスイッチング制御技術からDC-ACインバータを介さずに中間タップ付き蓄電モジュールから低損失・低ノイズな交流出力が可能となる。

INTERVIEW

インタビュー

コンデンサー素材の老舗メーカーが宇宙技術で蓄電装置に革新を起こす!

日本蓄電器工業株式会社
事業化促進部: 電源グループ 主任技師
関戸謹

日本蓄電器工業の蓄電デバイス『電気二重層キャパシタ』にJAXA特許技術回路を搭載することで、従来のバッテリーに比べ、飛躍的に寿命を延ばすことに成功。長寿命で高効率、−20〜60℃までの幅広い環境温度において使用できる画期的な蓄電装置が、どのように生み出されたのか、開発者に伺った。


01. 本業はコンデンサの素材メーカー


御社の事業についてお聞かせください。

我が社は、電子部品に使われているアルミニウム電解コンデンサ用電極箔の製造が本業です。コンデンサの電極箔となる平面に、ミクロの穴を無数に開け表面積を拡大することで、コンデンサの容量をアップさせる独自技術を50年以上に渡り培ってきました。この電極箔を用いたコンデンサは、一般の方が目にするあらゆる電子機器、テレビやビデオなどの家電から、ハイブリッドカー、大型インバーター・コンバーター機器に幅広く活用されています。

今回、JAXAの特許技術をライセンスすることになったきっかけは?

本業であるアルミ電極箔の技術を応用して、環境エネルギー分野へ新事業を展開できないかと探っていたところに、我が社がコンデンサメーカーだと勘違いされて、JAXAさんから「電圧均等化制御技術」の活用をご提案いただいたのがきっかけです。2008年に特許の発明者から技術の概要を伺い、2009年から共同研究をスタート。環境エネルギー分野のための蓄電装置の開発に取り組みました。
 従来の技術では、蓄電デバイスを直列に複数個つなげると各蓄電デバイスの電圧にばらつきが生じます。その結果、各々の蓄電デバイスの持つエネルギーを十分に使い切ることができずエネルギーの利用効率が悪くなると同時に、一部のデバイスに過負荷がかかり蓄電装置自体の寿命を短くします。しかし、JAXAさんが人工衛星のために開発した「電圧均等化制御技術」を使えば、蓄電デバイスの数が増えても、各蓄電デバイスの電圧を均等化することでこの問題を解決します。

02. 環境エネルギー分野への挑戦


環境エネルギー分野のための蓄電装置に求められる条件とは?

たとえば、山間部に設置された通信機器や計測機器など、過酷な自然環境において使用される電気機器は、気温の変化や豪雨、風雪などに晒されています。しかも、簡単に劣化した蓄電デバイスの交換はできません。そのため、蓄電デバイスには、長寿命であること、屋外環境への耐性があること、急速に充電・放電ができることなどが求められます。しかし、現在使用されている鉛蓄電池やリチウムイオン電池は、化学変化を伴う充放電方法であり、充放電回数や温度によりバッテリーの容量が劣化します。そのため過酷な環境下での寿命は、数ヶ月から長くても2〜3年です。また、発火リスクがあったり、0℃以下では性能が低下するため屋外環境に適しません。

それらのデメリットを、新開発された製品ではすべて克服されたわけですね。

そうです。我が社で採用している電気二重層キャパシタは、イオン分子の吸脱着という物理現象により充放電を行うため、高温環境下で劣化したり、低温環境下で性能が低下することがありません。そのため、電気二重層キャパシタ搭載の無停電電源『キャパシタUSP-J』シリーズは、期待寿命10年以上、−20℃〜60℃まで幅広い温度環境で使用することが可能です。
 つまり、長期間メンテナンスフリーで過酷な温度環境に耐えられる蓄電装置なのです。また、既存の蓄電装置と比べ、故障の原因となるファンやヒーターが必要なく無騒音・無発塵など、環境負荷も格段に軽減することができました。

安全で、堅牢で、長持ちする、信頼性の高い蓄電装置、バックアップ電源が誕生したわけですね。開発過程で苦労した点はありますか?

JAXAさんの技術は公共の特許のため、これをベースに共同開発で実用化に向けた独自技術を生み出して新たな特許を申請する必要があったのが大変でした。そのため、集中して開発を行い、2009年9月に特許の共同出願に漕ぎつけました。また、製品化の過程では、原理的なものから製品化するまではスムーズに行ったのですが、その後の、安全規格、電磁環境規格などの条件に適合させるのが大変でした。国内で販売するためにクリアすべき規格、ヨーロッパで販売するための認証など、それぞれの規格に条件を適合させていかなければいけなかったのです。

03. バックアップ電源に革新を起こす!


それらの規格を無事クリアして、これからどのような展開をしていく予定ですか?

2013年4月に発売し、現在の販売台は約100台程度です。今後は社会インフラ分野や産業機器分野を中心に、地震計や気象計などの環境測定機器、屋外用防犯カメラやセンサーなどのセキュリティー機器、屋外用モデムやルーターのようなデータ通信・伝送機器など、停電や災害などの非常事態で、電源が落ちると生活に大きな影響を及ぼす電気通信機器のバックアップ用電源として、様々な分野で活用していただきたいと思っています。そのための、いまは種まきの段階です。各企業に製品の企画段階で採用してもらい、『キャパシタUSP-J』シリーズを導入した製品を開発していただきたい。また、アメリカやヨーロッパなど海外展開も視野に入れ、数年のうちには、数億円単位の売り上げになることを目指しています。

JAXAと共同開発で新製品を生み出したメリットは?

国内では、JAXAさんのネームバリューの強さのおかげで営業が非常にしやすいのが最大のメリットです。また、宇宙開発技術の応用ということで製品の信頼性を高めることができた点も良かったと思っています。また、『キャパシタUSP-J』シリーズの価格は、バッテリーに比べると高額のため、導入段階ではハイコストになりますが、交換頻度や消費電力を考慮するとランニングコストを抑えられるため、長期間のトータルコストで導入メリットがあります。

LED電球と一緒で、従来品に比べ飛躍的に長寿命で環境負荷の低い製品のため、一気に市場規模が拡大する可能性があると思うのですが?

今後は、我が社の主力であるアルミニウム電解コンデンサ用電極箔事業を展開していきながら、蓄電装置事業も発展させていくことで、環境エネルギー分野にも貢献していきたいと思っています。

OTHERS

その他の製品