JAXAオープンラボ公募

宇宙モードをみんなモードに JAXA COSMODE PROJECT

プチプチで作る、軽くて丈夫な太陽電池パネル

 誰もがプチッ、プチッとつぶして遊んだことがあるに違いない、クッキー缶などに入っている緩衝材「プチプチ®」。実はその構造を宇宙開発や宇宙探査に活用し、軽くて丈夫な太陽電池パネルを作る研究が行われている。「プチプチ®」の登録商標をもつ川上産業株式会社で開発チームをとりまとめてきたのがリーダーの杉山さん。広報担当取締役であり、プチプチ文化研究所所長の肩書も持つなど、マルチな才能で宇宙開発に新しい空気を吹き込もうとしている。

プチプチの形に秘密の鍵が!

すぎやまあやか
すぎやまあやか
1977年生まれ。東洋大学短期大学部観光学科(現東洋大学国際地域学部国際観光学科)卒業。短大卒業後、ウェブ制作の仕事に従事。1999年、川上産業株式会社に入社。2006年、広報活動の一貫で「プチプチOFFICIAL BOOK」を執筆。2002年、ウェブ上に「プチプチSHOP」を開店。2007年に株式会社バンダイと協力して開発した癒しグッズ「∞プチプチ」が大ヒット。プチプチの一般向け商品を世に広めた立役者。また、プチプチの歌「プチプチなのなの」を歌うバンド「プチメタル」のヴォーカルを務める。2008~2010年、宇宙オープンラボ「マルチセル構造の研究開発」ユニットリーダー。日経ウーマン・オブ・ザ・イヤー2008を受賞。

Q:あの「プチプチ」がどうして宇宙へ?

杉山 きっかけは、プチプチの形状に興味を持ってくださったJAXAの研究者(石村准教授)から連絡をいただいたことなんです。
 プチプチはポリエチレンでできていて、素材的にはそのまま宇宙で使うことはできませんが、独立したセルが無数にあるあの形を活かせば軽くて、耐故障性に優れ、安価な太陽光パネルが開発できるのではないか、とおっしゃったんです。私自身、日々、プチプチのさまざまな利用法を探していますので、材質や製造方法を工夫すれば宇宙で使えるかもしれないとの話に、興味を持ったんです。

Q:プチプチっとした形がどういう点で太陽電池パネルにぴったりなのですか?

杉山 プチプチの形状は難しく言うと「軽量マルチセル構造」というものですが、要するに独立したセル(気泡)の集合体なんですね。それぞれのセルが独立していますので、たとえ1つつぶれても他に影響が少なく、全体として耐故障性に優れるといえます。皆さんはふだん何気なくプチプチを使っていらっしゃって、形状なんてあまり気にしたことがないと思いますが、意外にも独立したセルの集合体はプチプチのほかにあまりないんですよ。

Q:では、太陽電池開発に向けて、宇宙オープンラボでは具体的にどのような研究をされているのですか?

杉山 1つには、マルチセル構造を活かして太陽電池パネルを軽くすること。そして、それをきちんと作るための製造技術を確立することです。太陽電池パネルにはコア材といって、いわば「芯(しん)」になるようなアルミニウム製の部分があるのですが、それを現在のものより2割軽くして、1平方メートルあたり2kgにすることを目指しました。
 2つ目の研究課題は、試作したものが宇宙で実際に使えるかどうかの検証です。真空環境を作れる装置「真空チャンバー」にプチプチを入れて試験を行いました。
 それと3つ目として、今回の研究で得た技術を地上での製品開発に活用することです。


Q:どのような研究成果がありましたか?

杉山 製造技術を確立するという目標は達成できたと思います。アルミ蒸着フィルムという、気密性に優れたものすごく薄いアルミ箔のようなものがあるんですが、それを重ね合わせていきながら、プチプチ状のパネルを作っていくんです。試験の結果、1つの気泡から空気が抜けても他の気泡は割れず、空気もれを抑えることができることが確認できました。
 しかし、宇宙で実際に使用できるまでにはまだまだ更なる改良が必要だと考えています。今回の開発では、宇宙でも使える仕様にするための新しい課題が見えたことも、1つの成果だと思います。

Q:新しい課題とは何ですか?

杉山 梱包資材の分野では、私たちは最高の品質の製品を作っているという自負があります。でも、宇宙空間はとても過酷な環境ですから、地上と宇宙では求められる品質のレベルが格段に違うんです。例えば、見た目は何も問題がない、一般のお客さまに販売できるような物でも、宇宙空間を模した真空チャンバーに入れるとどこかから破断してしまう。詳しく調べると、どこかがほんのわずかに融着していなかった、という目に見えない不良がみつかったりしたのです。地上の製品としては全く問題がないものなんですけどね。
 ですから、宇宙のレベルにまで品質を上げるためには、やはり設備なり加工技術なりをもっと向上させる必要があると思いました。でもそれには私たちの知識だけでは厳しい部分もあると思いますし、設備にどれだけ投資できるかというのが難しいところですね。

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