安全・信頼性ノウハウ・ツールの紹介

品質工学ツール、
JIANT(Jaxa Integrator for ANalysis Tools)

JIANT(Jaxa Integrator for ANalysis Tools)とは、使われる環境や材料のばらつきを予め考慮して、安定して動作できるモノ作りを行うための品質工学ツールで既存のソフトウェアをJIANTに接続する形態で利用できます。

JIANTとは

JIANTとは、環境や材料のばらつきに対して安定して性能を発揮させるための方法論の「品質工学」と言われる考えをベースに利用しています。品質工学は、国内の自動車・電機業界などで広く利用されている考え方になります。最近では、モノ作りでシミュレーションツールを使う事が一般的になりましたが、パラメータの入力と結果の評価が試行錯誤で行われるため、時間と労力がかかりました。また、良い結果が出たと思っても、実際にモノを試作すると期待した性能が出なかったり、不具合が発生したりする事がありました。JIANTは、一般に良く利用されるWindowsパソコンで動作できるツールであり、皆様がお使いのシミュレーションツールに対して、

  • ①パラメータの組合せの入力
  • ②繰り返し計算の自動実行
  • ③安定して性能が発揮できる設計解・最適解の算出

を行う事が可能です。

JIANTツール

●JAXAでの使用例

2018年度に、JAXAで開発中の火星衛星計画探査(MMX)の着陸シミュレーションに適用しました。この探査計画は、地球から遠く離れた火星衛星(ファボス等)に探査機を着陸させて様々な計測を行うのが目的です。火星衛星の環境は未知の部分が多く、写真で見る限りは地面が大きく凹凸した環境に見えます。そこで、地面の傾きや、探査機の姿勢など、想定される様々な状態を考慮し、どのような状態であっても93%の確率で火星衛星に着陸できる条件の算出を行いました。 しかし、現在の探査機の形では、地面がほぼ水平(±3.75度以下)を探さないと実現が困難であるという結果でした。地面が水平な場所を探して着陸するのは困難であるため、MMXでは地面の傾きが±10度程度であっても安定して着陸できる様にするために、太陽電池パドルを小さく、足を踏ん張ったダンゴの様な形に改良して対応する事にしました。これは、JIANTを使う事により、MMXの設計の改良に繋がった事例になります。

火星衛星探査機(MMX)の設計変更

火星衛星探査機(MMX)の設計変更イメージ写真

火星衛星探査機(MMX)の設計変更イメージ写真

●利用シーン

【次のような場合に利用可能です】
・ベンチャー企業でお使いのシミュレーションツールにJIANTを繋いで、最適解を算出する事
・表計算ソフト(Excel)等のシミュレーション(比較的簡単に利用できます。)