JAXA
Sessionsセッション紹介

超小型衛星編隊飛行を利用した理学観測ミッションの可能性

①五十里 哲、②松尾 太郎、①中須賀 真一
①東京大学、②名古屋大学
開発移行可能

概要

近年、複数の衛星の相対位置・姿勢を協調的に制御する編隊飛行技術と複数衛星の開発に適した超小型衛星技術を組み合わせた、超小型編隊飛行ミッションが注目されている。
特に、精密な編隊飛行制御による宇宙干渉計が実現すれば、大型衛星1機よりも 空間分解能の高い天体観測を行うことができる。
本発表では、現在検討中の超小型編隊飛行を活用した宇宙科学ミッション例として、超小型赤外線干渉計実証ミッションSEIRIOS、超小型X線干渉計ミッションMIXIMなどを紹介し、その実現可能性を議論する。

本ミッションの狙い

(ここでは複数あるミッション案のの中からSEIRIOSについて紹介する。)
SEIRIOSは3機の衛星で、基線長10~100mの宇宙干渉計を構築し、太陽系内天体の超高解像度分光観測を行う。超小型衛星による高精度編隊飛行の技術実証機にも位置づけられる。

実現のキーとなる要素技術

複数の衛星の相対位置・姿勢を協調的に制御する編隊飛行技術とその高精度化、理学機器の工夫による制御精度要求緩和、理学機器と協調した衛星制御の3つが重要技術となる。

衛星のスペック

50kg級超小型衛星 1機
 三軸姿勢安定、軌道制御機能
10kg級CubeSat 2機
 三軸姿勢安定、軌道制御機能

衛星のイメージ図

ミッションのイメージ図

開発状況・計画

概念設計が完了し、現在は地上実験にて制御系の構築・検証を行っている。
開発予算獲得後、3~4年で開発を完了し、打上後1年間運用を行う。

ミッションや技術詳細

SEIRIOS(Space Experiment of IR Interferometeric Observation Satellite)は、世界初の赤外線宇宙干渉計を実現するためのミッションである。SEIRIOSは50kg級の超小型衛星1機と10kg級のCubeSat2機で構成され、直線形状の編隊飛行を行うことで干渉計を構築する。干渉計の基線長は衛星間距離で決まり、10~100mまで制御可能である。2機のCubeSatに搭載された反射鏡で天体からの光を反射し、中央の超小型衛星に集め、干渉させる。通常、赤外線を干渉させるためには、波長の数分の1以下で衛星間の相対位置・姿勢を制御する必要があり、この値は100nm~1umとなりとても高い制御精度が要求される。そのため、宇宙干渉計はこれまで何度も提案されてきたにも関わらず実現することができなかった。SEIRIOSでは、相対姿勢・位置誤差に強い瞳分光技術を応用した干渉計を用いることで、要求精度を1mmまで緩和する事ができる。そのため、超小型衛星でも実現可能な干渉計となった。また、3機をドッキングさせた状態で打ち上げることで、最低限の観測や機器のキャリブレーションは編隊飛行を行わずに実現することが可能となり、十分な準備の上で高精度編隊飛行制御の実証を行うことができる。高精度編隊飛行制御が実現した暁には、エウロパなど太陽系内の衛星を高空間分解能で分光観測を行うことができ、惑星科学の発展に貢献する事ができる。

参考文献など

五十里,他,”超高精度編隊飛行技術実現に向けた課題整理と実証計画”,第 63回宇宙科学技術連合講演会,2019.
林田,他,“ 多重像X線干渉計 MIXIM のスケーラブルなミッション形態”,第 63 回宇宙科学技術連合講演会,2019.
松尾,他,“ ミリ秒角を実現する宇宙赤外線干渉計”,第 63 回宇宙科学技術連合講演会,徳島, 2019.
五十里,他,”超小型衛星による超精密フォーメーションフライト実証計画”,第 64回宇宙科学技術連合講演会,2020.
S. Ikari, and et al., "SEIRIOS: A Demonstration of Space Infrared Interferometer by Formation Flying of Micro- Satellites", 35th Small Satellite Conference, 2021

動画

講演資料


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