スペースからの天体物理観測にとり、特に新しいアイデアをいち早く実現するという観点から、超小型衛星は魅力的なプラットフォームである。しかしながら、現状においては、超小型衛星による天体物理観測の実現は極めて限られている。これは、信頼性ある衛星バスを構築する枠組みが確立されていないためであると思われる。そのため、天体物理観測において、ある程度共通的に使える衛星バスのプラットフォームの構築を提案する。特に天体物理観測で要求される指向精度を達成するため、別途開発が進められている超小型衛星用の姿勢制御ユニットを活用する。
概要
本ミッションの狙い
本活動で、天体物理学ミッション用の共通衛星バスがプラットフォームとして確立する。それにより、超小型衛星を用いた天体物理観測の実現が確実かつ容易になるとともに、研究者がミッション部に集中することで、より新しいアイデアの創出を促す。
実現のキーとなる要素技術
本構造のとりまとめにあたり、天体物理学ミッションに必要な仕様のアンケートを実施した。その結果、以下がキーとなる技術要素である。
(1) 高い指向安定性(<10 arcsec/min)への要望が多い。
(2) 軌道として、dawn-duskの太陽同期軌道を要求するミッションが多い。
(3) データレート等は、地球観測衛星と大きくは異ならない(< a few G Bytes/day)
(4) 将来的には、検出器冷却の要望がある。
衛星のスペック
・絶対指向精度約1度、一方指向安定性について厳しいものは<10arcsec/min(3σ)
・ダウンリンク時に数Mbpsのデータレート。また、観測後、約1日でダウンリンク可能であること。
・低inclination軌道でも成果を得られる熱構造を設計するが、太陽同期軌道(Twilight zone)が熱的な観点からより望ましい。
衛星のイメージ図
ミッションのイメージ図
開発状況・計画
超小型衛星の天体物理活用に興味をもつグループと個別の情報交換を進め、共通の仕様要求をまとめつつある。それと並行して、2021年から具体的なミッションの概念検討を開始した。プラットフォーム確立に2年程度を要し、その確立後には、ミッション提案から打上げまで1-2年で実現する流れを目指す。
ミッションや技術詳細
スペースからの天体物理観測にとり、大気の影響のないスペースからの観測は、非常に重要なものである。しかしながら、現在の天体観測ミッションは、大型化し、実現までに非常に長時間を必要とするという問題点がある。そこで、特に新しいアイデアをいち早く実現するという観点から、超小型衛星の活用を検討しているグループが多く存在する。
しかしながら、現状においては、超小型衛星による天体物理観測の実現は極めて限られている。これは、信頼性ある衛星バスを構築する枠組みが確立されておらず、天体物理ミッション提案者が、バス部の開発まで担当する必要があるためであると思われる。ただし、天体物理観測に要求されるバス部の要求は、共通項が多い。
そこで、本講演では、天体物理観測において、ある程度共通的に使える衛星バスのプラットフォームの構築を提案する。超小型衛星に興味を持つ天体物理関係者へのアンケートから、共通バスプラットフォームに必要な仕様の概要をまとめた。特に天体物理観測では高い指向安定性が要求される。これを達成するため、別途開発が進められている超小型衛星用の姿勢制御ユニットを活用する。