トランジット法は、太陽系外惑星そのもののキャラクタリゼーションを可能にする数少ない手法である。トランジットモニター専用衛星ケプラーは4年間の観測により数千個の惑星を検出し大成功を収めた。この成功を受け、全天トランジットモニター衛星TESS、PLATOが控えている。しかしこれらのミッションはケプラー以上の長期間観測を想定していない。LOTUS計画は、超小型衛星による近傍恒星系の長期間モニター観測である。TESSと同等程度の口径でありながら、広視野かつ超小型衛星の低コストを生かした長期間の観測により、太陽系に存在するような中長周期の冷たいガス惑星をトランジット法で検出することが可能となる。これにより、系外惑星と太陽系惑星をつなぐサイエンスを行うことができる。また本計画は、コンステレーションによる全天・常時観測のプロトタイプとなる超小型衛星を実証し、同時にTESS・PLATOで狙っている地球型惑星探査に相補的な、TMTやJWSTでキャラクタライズ可能な太陽系ガス惑星類似の系外惑星を多数発見することを目指す。
概要
本ミッションの狙い
太陽系の木星や土星に対応する姉妹惑星を太陽系外惑星に発見して、太陽系の普遍性を探る
実現のキーとなる要素技術
高姿勢安定(特にサイエンスカメラによる姿勢フィードバック系)
高精度測光用広視野カメラ
衛星のスペック
20 kg級
ペイロードのサイズ 150 x 150 x 400 mm 、5~6 kg 、6.5 W
通信量3.5 GB/day
姿勢決定精度 11 arcsec以下、安定度 毎周回軌道ごとに11 arcsec 程度、指向精度 11 arcsec (1σ) ※
全日照軌道 (sun-synchronous, dawn-dusk orbit)
衛星のイメージ図
20kg級30x30x40cmの超小型衛星に口径7.5cmの広視野カメラを搭載。姿勢決定精度のよいRW+スタートラッカを搭載し、必要であればサイエンスカメラからの姿勢制御系へのフィードバックを行う
ミッションのイメージ図
全日照軌道を回り、1周期ごとにnorth poleとsouth poleを定点観測し、両方向の10万以上の恒星の光度曲線を数年にわたりモニタリングする。初号機以降にも同様の衛星を打ち上げ、総観測期間10年以上をめざす。
開発状況・計画
おおまかな概念設計を行ったところである(参考文献[1]参照)。ミッション部の科研費獲得による開発開始を目指している。2028年JASMINEのpiggybackによる打ち上げを目指す。
ミッションや技術詳細
地球近傍での長周期の系外惑星探査は、太陽系惑星のような系外惑星の探査を可能にし、我々の太陽系の普遍性を理解するという目標をもつ。これは、今後の系外惑星での生命探査に対してもインパクトを持ちうる。このような問いは、理学コミュニティの中にとどまらず、一般に多くの人々の興味をひくものである点が、社会的な意味でのアピール点である。
本計画では、なるべく広い視野で継続的にモニタリングをすることが重要であり、それにより天文学の旗艦ミッション(JWST,TMT,NASA flagship2040等)で追観測をおこなうべき地球近傍の明るいベストターゲットを提供できる。広視野系のトランジット惑星探査は、原理的には一つの光学系に対しサイズによらずにほぼ同じ数の天体を観測することができる。これは超小型衛星のコンステレーションこそが広視野・長時間モニタリングの最適解であることを意味している。例えば、視野だけで見るとLOTUSの1機はPLATOやTESSといった何百億円クラスのミッションに匹敵する。これを全天に近い視野まで拡大することは、超小型衛星のコンステレーションでこそ現実的な計画であるという点がサイエンスの観点から見たアピール点である。初号機で実証できれば、その後、各国でLOTUSのコピーを打ち上げることで、超小型衛星の国際協力を進めていきたい。
参考文献など
[1] Kawahara et al. "LOTUS: wide-field monitoring nanosatellite for finding long-period transiting planets", SPIE (2020) 11443/1144316