太陽-地球惑星系科学分野では,地球・惑星などの太陽系天体周辺の宇宙環境が太陽活動によってどのように影響を受け,激しく変動するかを理解することを1つの科学目標としている.従来,宇宙環境変動の観測は1つあるいは数点の衛星の観測をできるだけ充実させて,宇宙空間のいろいろな領域に発生する宇宙環境現象の理解を深めてきた.しかし,このアプローチでは現象の局所的な詳細を理解することができるが,よりマクロな変動の中での現象の文脈を捉えることができない.この為,超小型衛星によるコンステレーション観測のプラットフォームを構築し,宇宙環境のマクロ変動を観測することを検討している.
概要
本ミッションの狙い
・コンステレーション観測による放射線帯から超高層大気への降下電子分布の全球的な把握
・コンステレーション観測による精密磁場計測によって,磁気圏ー電離圏を繋ぐ沿磁力線電流分布の微細構造の把握
(以上はミッション例)
実現のキーとなる要素技術
・コンステレーション観測を実現する多衛星の打上げ技術
・観測機器の小型化・省電力化
衛星のスペック
未定
衛星のイメージ図
ミッションのイメージ図
開発状況・計画
放射線帯から超高層大気へ降下する高エネルギー電子を計測する装置を九州工業大学のBIRDS5衛星に搭載する機会を頂いた.この装置により「あらせ」衛星と同時観測を行うことで,単独衛星レベルでの技術実証を行う.
ミッションや技術詳細
地球周辺の宇宙空間における宇宙環境変動現象の理解を大きく飛躍させる為に,超小型衛星によるネットワーク観測プラットフォームを構築することを提案したい.具体的な応用例としては,低高度極軌道衛星の多点観測により,全球的に放射線帯からの降下電子のエネルギースペクトルを計測し,放射線帯電子の超高層大気への降下が,超高層大気にどのような影響を与えるのかを知ること,などがあげられる.宇宙環境の研究は,これまで衛星・探査機の「その場」観測を充実させることで,(リモートセンシングではなく)「その場」の物理量を詳細に計測することを特色としてきた.しかし,単一衛星あるいは数機程度の衛星群では,局所的な現象の詳細は理解できても,その現象のマクロな文脈の中での位置付けを理解することが難しかった.この課題を解決する一つのアプローチとして,超小型衛星によるコンステレーション観測を行いたい.寿命が短くとも,安価であれば,繰り返し同じ衛星を打ち上げることで,長期的な宇宙環境変動をモニターを可能とする観測プラットフォームを構築すれば,宇宙環境研究のブレークスルーが得られるものと期待している.世界的にも,2020年代後半から2030年代にむけて地球周辺の宇宙空間におけるコンステレーション観測の検討が,各国ではじまっており,日本としても従来と同様に宇宙環境変動やその先にある宇宙天気研究に対して大きな貢献をしたい.現状は衛星単体の規模や,必要な衛星機数についての検討をはじめたばかりであるが,観測項目を絞ったとしても,数十機規模の衛星群があればこれまでにない科学成果が得られるものと考えている.
参考文献など
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