Comet Interceptorは,親機1台(探査機A)と子機2台(探査機B1, B2)による同時多点フライバイ観測で,太陽系形成初期の始原的な特徴を残す「長周期彗星」を初めて直接探査するESAのミッションである.日本からは1台の超小型探査機(子機)の提供を目指している.本ミッションは,子機を活用することにより高度な探査ミッションを可能にするという太陽系探査における超小型探査機の一つの活用のあり方をデモンストレーションするという位置づけに加えて,今後継続的に超小型探査機を太陽系探査に投入していくための,JAXAと企業の共同開発のあり方を試行する取り組みとしても位置づけられる.
概要
本ミッションの狙い
理学的な観点:太陽系形成初期の始原的な特徴を残す長周期彗星(あるいは恒星間天体)を人類として初めて直接探査する
工学的な観点:子機を活用することにより高度な探査ミッションを可能にするという太陽系探査における超小型探査機の一つの活用のあり方の実証
実現のキーとなる要素技術
・30kg級の超小型探査機バス
・長期ミッション(ただし稼働は短期間)に耐える品質・信頼性確保
・高度な自律制御・FDIR
・近接フライバイ観測技術
衛星のスペック
24U程度,約30kg
親機による彗星フライバイ軌道への投入(親機とともに複数機による多点フライバイ観測を実施)
衛星のイメージ図
ミッションのイメージ図
開発状況・計画
・現在概念検討中
・FY2023 EM製作・試験開始
・FY2026 FMのESAへの提供
・FY2029 打ち上げ
ミッションや技術詳細
2029年度の打ち上げを予定している欧州宇宙機関(ESA)が主導する彗星探査ミッション。彗星の中でも特に始原的とされるカテゴリーに属する長周期彗星あるいはオウムアムアに代表される恒星間天体を、人類として初めて直接探査する。
太陽ー地球系のラグランジュ点(L2点)に待機しながら、到達可能な未知天体を、地上観測を行って最大3~4年待ち、母船と2機の超小型探査機(子機)の複数機構成で当該天体をフライバイして多点観測する。人類として初めて訪問する長周期彗星(または恒星間天体)の核表面・コマを多角的に撮像・分光して形状、構造、コマの組成等を明らかにするとともに,同時多点観測により彗星周囲のプラズマ-太陽風相互作用を明らかにする.その結果、太陽系科学コミュニティが標榜する二つの科学テーマ
(1)太陽系における生命生存可能環境の形成の理解
(2)宇宙ガスを支配する普遍的な法則の解明
に対し、他の太陽系天体探査では得られない重要な知見を提供する
JAXAは、3機の探査機のうちの子機1機(約30kgのCubeSat型探査機)を提供し、そこにPROCYON,かぐや,あらせ,MMX等で日本が実績を持つ観測装置として可視カメラ、水素コロナ撮像器、プラズマ計測パッケージ(イオン質量分析器と磁力計)を搭載し,彗星の観測を行う。工学的には,子機を活用することにより高度な探査ミッションを可能にするという太陽系探査における超小型探査機の一つの活用のあり方をデモンストレーションするという位置づけに加えて,今後継続的に超小型探査機を太陽系探査に投入していくための,JAXAと企業の共同開発のあり方を試行する取り組みとしても位置づけられ,これまでに培ってきた超小型衛星・探査機技術をこのミッションを通じて,さらに日本の強みとして太陽系探査に活用していく第一歩にしていきたい.
参考文献など
欧州側の計画全体のホームページ:
https://www.cometinterceptor.space/