JAXA
Sessionsセッション紹介

超小型衛星群による重力波対応天体探査計画CAMELOT

大野 雅功
エトヴェシュロラーンド大学
概念検討中

概要

重力波天文学の発展には電磁波対応天体の同定とその追観測が必要不可欠である。重力波対応天体として有力なガンマ線バーストは突発天体であるため、ガンマ線での全天監視と高い天体位置決定能力の両立が重要となる。本計画は10機を超える3UサイズのCubesatsに大面積シンチレーター検出器を搭載し、常時ガンマ線全天監視を行いながらも、GPSによる精緻な衛星間のガンマ線到来時間差計測により、数度レベルでの天体位置決定精度を実現する。

本ミッションの狙い

重力波対応天体の電磁波同定およびそのX線ガンマ線観測

実現のキーとなる要素技術

コンパクトで低消費電力な光読み出しデバイス。現状SiPMを採用しているが、放射線耐性の向上が今後の課題

衛星のスペック

3Uサイズ
全天観測なので、指向精度の強い要求はない。
低軌道(500~550km)、低傾斜角軌道に投入するのが好ましいが、極軌道でも運用実績はあり。

衛星のイメージ図

ミッションのイメージ図

開発状況・計画

2017~2019 : CAMELOT計画概念検討、feasibility study 実施
2019~2020 : 1Uサイズ衛星搭載用の試作機設計を開始
2020~2021 : 1Uサイズ試作機制作
2021/3 : 1Uサイズ試作衛星GRBAlpha打ち上げ
2022/1 : 3Uサイズ試作衛星 VZLUSAT-2 打ち上げ

ミッションや技術詳細

10機を超える3UサイズのCubesat を打ち上げ、衛星間の光子検出時間差を利用してガンマ線バーストに代表される重力波対応電磁波突発天体の同定とその位置決定を行うミッションである。宇宙利用で実績があり、大面積加工、シンチレーション光子発光量に秀でたCsI(Tl)シンチレーターを利用する。3Uサイズに搭載できる最大サイズである150x75x5mm3サイズのシンチレーターをコンパクトでCubesatの限られた電力事情でも運用が期待されるSiPM(MPPC)で読み出す。
10機以上のCubesatsにより、常に全天を監視することができることが示されており、低軌道(550km, 50deg inclination)で9機のCubesatで天体現象を検出した場合、衛星間の光子検出時間差を相互相関関数や機械学習を利用した技法で解析することで、明るいガンマ線バーストであれば数度の精度で位置決定が可能であることをこれまでの概念設計フェーズで示した。
現在は、コンセプト実証のための試作機の打ち上げ、宇宙空間での運用を行うフェーズであり、2021年3月に打ち上げた1Uサイズの試作衛星"GRBAlpha"は現在も問題なく軌道上で動作しており、すでに5例のガンマ線バーストの検出に成功、我々のコンセプトのうち、検出器デザインが軌道上でも動作することを確認し、Cubesatによる科学観測の実用性を実証した。2022年1月に続く試作衛星VZLUSAT-2の打ち上げにも成功。検出器搭載数を増大させ、さらなる軌道上運用の実証を進める予定である。

参考文献など

"GRBAlpha: a 1U CubeSat mission for validating timing-based gamma-ray burst localization", Pal et al., Proc. SPIE Vol. 11444, id 114444V (2020)
"The simulation framework of the timing-based localization for future all-sky gamma-ray observations with a fleet of CubeSats", Ohno et al., Proc. SPIE, Vol. 11454, id. 114541Z (2020)
"CAMELOT: Cubesats Applied for MEasuring and LOcalising Transients mission overview", Werner et al., Proc. SPIE, Vol. 10699, id. 106992P (2018)

動画

講演資料


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