地球観測センサには、光学・電波、受動・能動等のカテゴリーがあり、その体系化を行っている。体系化に際し観測性能に影響するすべての要素を考慮する統一的な枠組を考案している。センサ小型化は観測性能の取捨選択と全体のバランス設計、そして必要に応じた新規要素技術の導入によって実現する。上記体系化手法をシミュレータとして整備しセンサ小型化にも応用する。
概要
本ミッションの狙い
従来の中大型センサの設計手法を小型センサにも応用することにより、システム最適化と開発要素の抽出を迅速に実施することを可能とする。
実現のキーとなる要素技術
光学・電波、受動・能動センサのセンサ性能を基本的な物理原理に立脚して定式化するセンササイエンスの技術。
衛星のスペック
地球観測センサのシミュレータの構築環境として以下相当である。
Dell Precision 7920
衛星のイメージ図
ミッションのイメージ図
開発状況・計画
光学・電波、受動・能動センサにセンサ性能を予測するモデルを構築した。今後、GUI化等を行い、JAXA/大学/民間のセンサ開発共通基盤として整備する。さらに、補正処理部まで含めたEnd-to-Endシミュレータを整備する予定である。海外のEnd-to-Endシミュレータの例を参考文献1),2)に示す。
ミッションや技術詳細
空間分解能やSignal-to-Noise Ratio(SNR)等の基本的な観測性能推定のため、センサを構成する各要素を観測情報の流れに沿った入出力としてモデル化する。この一連の繋がりを‘シグナルチェーン’と呼ぶ。高分解能イメージャでは確立された概念であるイメージチェーンを光学・電波、受動・能動を問わず一般的な地球観測センサに拡張した概念である。地表面からの電磁波を衛星姿勢や走査系で走査し、望遠鏡やアンテナ等の受信部で集約、バンドパスフィルタで特定波長範囲を抽出後、検出器においてパワーを電圧に変換し、信号処理部においてA/D変換を行ないデジタル出力とする。このようにシグナルチェーンに沿ってセンサの各要素を有機的に繋げて考慮することにより、観測性能を見通し良く推定することが可能となる。現状、この共通のフレームワークに則って定式化した上で、世界各国のセンサ性能を評価している。センサの解像度やシグナルノイズ比などの性能を示す式を導出し、光学センサおよび電波センサに適用し、妥当性を示した。近年の技術革新は、センサの高感度化、高解像度化といったさまざまな観測の進化の源となっており、ポイントとなるセンサ構成要素を明確化するとともに、将来を見越した設計をフレームワーク上で検証したいと考えている。さらに本フレームワークをセンサ小型化検討にも活用する。小型化にあたっては、ミッションコンセプト確立段階でリソース(質量、寸法、消費電力)制約の下、重視する性能と低下を許容する性能を明確にすることが重要である。既存の要素技術に基づいて上記シグナルチェーンを構築し、設計パラメータを変えながら、センサ性能要求とリソース要求を満たすようにシステム最適化をはかる。最適化後もミッション要求を実現できない場合に、新規の要素技術の導入を検討する。このプロセスを経ることにより、従来の中大型センサで培われた要素技術や設計手法を活用しつつリスクのある新規要素技術を最低限に抑えながら小型化を実現することを可能とする。またデータ品質について中大型センサを常に意識するため、単なるデモンストレーションで終わらせず社会実装へとつなげることにも寄与する。
参考文献など
1) C. Negueruela M. Scagliola, D. Giudici, J. Moreno, J. Vicent, A. Camps, H. Park, P. Flamant, R. Franco, ARCHEO-E2E: A Reference Architecture for Earth Observation end-to-end Mission Performance Simulators, Workshop on Simulation and EGSE for Space Programmes (SESP) 2012
2) R. Kedzierawski W. Oryszczak, K. Szczepankiewicz, A. Camps, H. Park, et al., BIBLOS for simulation of the Earth Observation missions, Proc. of SPIE, vol. 11442, 2020