JAXA
Sessionsセッション紹介

産学連携プロジェクトで目指す民間気象衛星

①岡島 礼奈、宇藤 恭士、石井 宏宗、(代表)舩越 亮、②三好 建正、寺崎 康児、Wu Ting-Chi、Mdini Maha、
Liang Jianyu、③鵜澤 佳徳、藤井 泰範
①株式会社ALE、②理化学研究所、③国立天文台
開発決定済

概要

近年世界中で深刻度が増す自然災害に対し、宇宙から 民間気象衛星で防災に取り組む産学連携プロジェクトAETHERを2021年9月に発足しました。気象予報に最も 重要な大気中の水蒸気と温度を昼夜天候に依らず 観測できるマイクロ波サウンダーを独自開発、衛星 コンステレーションによる高頻度観測データを基に 予報の精度向上を図り、最終的には日本から世界中 に気候変動の影響をより正確に反映した気象情報の提供を目指します。

本ミッションの狙い

気象予報に最も重要な大気中の水蒸気と温度を昼夜天候に左右されず観測できるセンサーとして小型マイクロ波サウンダーをCubeSat用に開発します。最終的には複数衛星による衛星コンステレーションで政府の大型衛星を補完する高頻度観測を提供し、民間から防災/減災に貢献します。

実現のキーとなる要素技術

小型マイクロ波サウンダー

衛星のスペック

- CubeSat
- 低軌道

衛星のイメージ図

ミッションのイメージ図

開発状況・計画

まずは要素技術開発、その後試作機による地上実証を経て、5年以内の宇宙実証を目指します。最終的には観測データから気象予報を基にしたソリューション・サービスまで、気象関連のサービス提供を計画しています。

ミッションや技術詳細

近年世界中で自然災害の深刻度が増しています。特に気候変動に関係した災害の影響は大きく、過去20年の経済損失は2.245兆ドル(自然災害全体の77%)にも上ります。また地理的要因からアジアは自然災害の影響を受けやすく、中でも四方を海に囲まれた日本は最も被害の大きな国の1つです(*1)。この様な状況下で、我々ALEは宇宙を活用して理不尽な災害被害を少しでも減らしたいとの想いから産学連携プロジェクトAETHERを発足しました。各参画機関が各々の分野から得意技術を持ち寄り地球観測用の小型センサーを独自開発、それを搭載した気象衛星で宇宙から大気データを取得し、そのデータを基に気象予報の精度向上を図って、最終的には災害多発国である日本から世界中に今の地球環境に適した気象情報の提供をします。AETHERは民間気象衛星で気象予報に用いる観測データ取得を目指す日本初の取り組みとなります。
気象予報は場所や時間に依らず広く安定した観測を基に行われることが理想です。ところが、実際は陸上に比べ観測手段が限定的な海上では観測データは十分ではありません。例えば、日本の様な島国に多い臨海地域の気象予報には海上を含めた広範囲のデータが特に重要です。人工衛星はこういった条件での広範囲の常時観測に適しており、これまでは政府の大型衛星がその役割を担い気象予報に貢献してきました。しかし、大型衛星は製造や運用に莫大なコストを要する為、限られた国家予算の中でこれまで通り政府が衛星を運用し続けるのは簡単ではありません。一方で自然災害の増加で気象予報の重要性は高まっています。例えば豪雨や台風は数時間から数日先の情報が大切な現象で、これは気象予報にとしては比較的短い期間に相当します。それらの予報改善には観測頻度の高いより詳細なデータが求められますが、実現には技術向上や関連インフラの充実が必要です。
AETHERでは実用化が進むCubeSatを採用しコストを大幅に抑えます(1衛星あたり数百億円→数億円、プロジェクト規模で数千億円→数十億円と、約1/100の削減を想定)。また、気象予報に最も重要な大気中の水蒸気と温度を昼夜天候に左右されず観測できるセンサーとして「マイクロ波サウンダー」をCubeSat用に開発します。さらに、複数衛星とその運用技術による「衛星コンステレーション」で政府の大型衛星を補完する高頻度観測を提供し、民間から防災/減災に貢献します。

参考文献など

*1)出典” Economic losses, poverty & disasters: 1998-2017"、ルーバン大学(ベルギー)災害疫学研究センター/国連防災機関共著

動画

講演資料


※無断配付・二次利用厳禁