2019.11.1NEWS
【開催報告】月をマーケティングする!?令和初の中秋の名月夜に語り合う
月のマーケティングや月面フードに関するトークセッションを開催
2019年9月13日に開催された『アポロから50周年×令和初の中秋の名月企画』人類の宇宙進出に求められるマーケティングとは?!
~月のマーケティングから月面フードまで~(JAXA共催)に、マーケティングや宇宙開発にかかわる様々な分野から有識者が登壇。
JAXAからも落合美佳国際宇宙探査センター主任、 菊池優太J-SPARCプロデューサーが登壇し、
国際宇宙探査計画の紹介やマーケティング視点での将来宇宙探査についての議論を行いました。
イントロダクション:「月をマーケティングする(日経BP社発行)」の概要紹介
湊宣明氏(立命館大学大学院テクノロジー・マネジメント研究科/宇宙航空マーケティング研究会リーダー)より、
本イベント開催のきっかけとなった日経BP社発行の「月をマーケティングする」の概要について紹介。
メインテーマである宇宙ミッションとマーケティングに関して、
宇宙計画・宇宙ミッションへの興味・関心・感情移入を目的変数とし、
その変化を報道・メディア、 一般国民、 企業等の3つの視点と時代背景について体系的な説明がありました。
(湊氏)宇宙ミッションには莫大な費用と時間がかかり、 そのために宇宙ミッションの価値を高める工夫や価値を伝えるための広報戦略が必要となる。
アポロ計画では、 米国の時代背景やNASAによるマーケティングも相まって、 人類が月に到達する瞬間に大きな興味・関心を持った。
結果、 宇宙のもつ価値は非常に大きなものとなり、 企業等をはじめとした宇宙に関わる産業が広がった。
【パネルディスカッション1.】
「アポロ計画から学ぶ、 日本が月を目指すために必要なマーケティングとは?」
各登壇者からミニプレゼンの後、 マーケティングの視点からみたアポロ計画の成功・失敗をベースに、
湊氏のモデレーターの下、 登壇者による活発な議論が展開されました。
竹内靖朗氏(日経BP『月をマーケティングする』担当編集者)
「月をマーケティングする」の出版に至った背景について、 著者の内の一人であるデイヴィッド・ミーアマン・スコット氏が執筆した動機など、
担当編集者独自の視点を交えて紹介。 https://shop.nikkeibp.co.jp/front/commodity/0000/P50430/
佐藤 将史氏(一般社団法人SPACETIDE)
主に日本及び世界の新たな宇宙産業の発展に向けて、 月面開発計画・宇宙計画の過去と未来を軸に、 様々な業種の企業が、
これからどのように月面開発に関わっていくべきかプレゼン。
落合 美佳(JAXA国際宇宙探査センター)
JAXAが関わるこれからの国際宇宙探査シナリオや月の極域を中心とした水が存在する可能性、 人類が月や火星に行く目的・意義について持続可能性を踏まえて紹介。
荒井 誠氏(株式会社電通・電通宇宙ラボ/宇宙航空マーケティング研究会)
宇宙開発に向けて人々が抱く夢・ビジョンの必要性から、 それらを実現するためのイノベーション・コミュニケーションのあり方について紹介。
宇宙計画においてマーケティングが果たす役割とは?
(竹内氏)国民の関心を引きつける役割がある。 ただ、 アポロ計画では月面からのテレビ中継がどんどんリッチなものになっていったのに、
国民の興味はしぼんでいった。 予算をつぎ込んでもただ成功しないということに気づいた。
(落合)宇宙計画に関して、 どれほどパッションがあっても続かないところがある。
各企業・個人が自分ごととして月に行く理由・意義を考えることが必要である。
いかに宇宙計画を一度きりのものではなく、 サステイナブルなものにするのかを考えなければいけない。
(佐藤氏)一般の人も楽しめるような体験コンテンツを発信することが大切。 特に民間企業から発信することが大切ではないか。
また、 これからはSDGsを主体として、 宇宙市場を一緒に事業を作っていく必要があると考えている。
(荒井氏)持続可能性を考えると、 現在の宇宙産業の受注型の意識をなくし、 企業等の力を積極的に活かし宇宙開発を民営化することが、
エコシステム構築には肝要ではないか。
(湊氏)官主体で宇宙計画を進めるだけでは、 持続可能なミッションとはいえない。
民間が主体となり、 持続可能なミッションを考えたマーケティングをする必要である。
【パネルディスカッション2.】
月面×フード×マーケティング~人類は月で何をたべるのか、 食が月面ビジネスをリードする?!~
各登壇者からミニプレゼンの後、 JAXA菊池のモデレーターの下、 宇宙と食に関する登壇者による活発なディスカッションが行われました。
小正 瑞季氏(リアルテックファンド/Space Food X代表)
Space Food Xが取り組む、 宇宙および地球上における食料の生産・供給に関する課題解決ならびにそれに伴うマーケットの早期創出について紹介。
増田 拓也氏(株式会社シグマクシス)
生活者の視点から食の問題を考える新しい食の取り組みやフードテック業界の企業が集う「Smart Kitchen Summit Japan」について紹介。
浅野 高光氏(株式会社ワンテーブル/株式会社エムエスディ)
ワンテーブルにおける防災・備蓄の視点から考える食問題へと取り組みについて、
宇宙防災備蓄食という宇宙でも防災でもなく日常から食べられるものが宇宙で食べられるようになるという新しいコンセプトを紹介。
榎本 麗美氏(宇宙ビジネスを応援する宇宙キャスター/星空準案内人)
キャスターの立場から、 報道・メディアとして宇宙に関する考えを紹介。 宇宙に関するテーマは内容が専門的で、
視聴率が伸びにくい現状や自身が宇宙に携わるようになったきっかけを体験談とともに紹介。
なぜ「食×宇宙」か?「食」は月探査ビジネスを加速するドライバーになりえるか?
(榎本氏)宇宙の話題は少し実感が湧きにくいですが、 食は身近に存在するので、 想像しやすいテーマだと思います。
宇宙食としてあげられている培養肉も宇宙分野だけでなく、 SDGsの課題解決に期待されているのは面白いです。
(小正氏)宇宙と地球で食に関するソリューションは同じです。
地球上で課題を解決することと宇宙で課題を解決することがより繋がっていくことができたら、
将来の月探査ビジネスを推進するうえで十分魅力的なドライバーとなり得ると思います。
(増田氏)日本の文化や歴史が強みになると思います。 これらはお金を出して買えるものではありません。
また、 宇宙の閉ざされた環境で食の供給方法を考える事は地球上でサステイナブルにするために必要だと思います。
(浅野氏)さらに事業を加速させるために、 宇宙の情報・技術を民間にも公開して欲しいと思います。
宇宙で人間の生理現象やその解決技術を応用することで、 地球上で困っている人や問題を解決できるのではないかと考えます。
■イベント概要
人類の宇宙進出に求められるマーケティングとは?!
~月のマーケティングから月面フードまで~
日 時:2019年9月13日(金)18:45-21:00、 終了後ネットワーキング
場 所:宇宙ビジネス拠点・X-NIHONBASHI
主 催:宇宙航空マーケティング研究会、 Space Food X、 宇宙航空研究開発機構(JAXA)
協 力:ABLab
[参考リンク]
●主催・協力機関によるイベントレポート
(宇宙航空マーケティング研究会ウェブサイト)
http://www.j-mac.or.jp/past-researchproject/23001/
(ABLabウェブサイト)
https://ablab.space/event/marketing-the-moon-20190913/
●Space Food X
https://www.spacefood-x.com/
(写真提供) ABLab