オーロラは磁気圏の電子が大気に降りこむことによって発生することが知られている.この電子は高度1,000 - 10,000kmに何らかのメカニズムによって形成される大規模な電場によって加速されることで地球に向かって降りこむものと理解されているが,その電場の形成メカニズムは未解明であり,太陽圏プラズマ科学における最重要課題といえる.形成メカニズムの理解のためにはその時空間発展を把握することが不可欠であり,本ミッションでは超小型衛星の機動性を活かした同時多点観測によりそれを実現することを目指す.
概要
本ミッションの狙い
太陽圏プラズマ科学における最重要課題の一つである「オーロラ電子加速領域の時空間発展」を同時多点観測によって解明すること
実現のキーとなる要素技術
*観測器の小型化
*推進系(dV~1km/s)
衛星のスペック
サイズ:必須搭載機器~2-3U程度
姿勢:オーロラ帯で機器視野が上空を見ること,もしくはspin安定
通信量:10-20MByte/day/機 程度
軌道:近地点高度500-1,000km x 遠地点高度7,000-10,000 km以上の楕円,ほぼ同一の磁力線上を複数の衛星が別の高度で横切ること
衛星のイメージ図
N/A
ミッションのイメージ図
開発状況・計画
初期的な概念検討の段階である.
ミッションや技術詳細
地球の場合,オーロラ電子加速電場は高度 1,000 - 10,000 km程度の領域に形成される.この電場構造の時空間発展をとらえるため,異なる高度で同時多点観測を行う.
このため,各衛星はinclination 90°程度,近地点高度500-1,000km x 遠地点高度7,000-10,000km程度(TBC)の楕円軌道とし,近地点引数をずらす.1回の打ち上げ機会で実施するために最初はすべての衛星を同じ高度に投入したのち,キックモータ等を利用した各衛星の推進系で遠地点高度を上昇させる.最小で4機を想定するが,さらに機数を増やせれば,時間・空間分解能の向上が見込める.
観測(磁気圏から降りこむ電子の方向とエネルギーを計測する)はオーロラ帯で実施する.必須ペイロードは,オーロラ加速電場を推定するための電子計測器である.また,加速電場の形成と密接にかかわる沿磁力線電流を計測するための磁力計(伸展ブームつき)を準必須ペイロードと位置づける.さらに搭載リソースの余裕が見込まれる場合のオプションペイロードとして,電場計測器,オーロラ撮像カメラ,イオン計測器などの候補がある.観測器についてはこれまでに,れいめい(INDEX)衛星,ジオスペース探査衛星あらせ(ERG),水星探査ミッションBepiColomboなどでの搭載実績,および火星圏探査計画MMXや彗星探査計画Comet Interceptorなどに向けた開発実績が豊富にあり,技術的に大きなジャンプは無い.観測器のさらなる小型化はミッション実現に向けたひとつの鍵であるが,これまで電子回路のASIC化や1軸伸展小型ブームの設計検討などを基礎開発的に進めており,実用の目途が立っている.
参考文献など