2019.12.2

MITテクノロジーレビュー日本版カンファレンスに、上村事業開発グループ長が登壇しました。

2019年11月29日、室町三井ホール(東京都中央区日本橋)で開催された
MITテクノロジーレビュー日本版主催の「宇宙ビジネス」をテーマとしたFuture of Society Conference 2019に、
上村俊作事業開発グループ長・プロデューサーが登壇しました。

モデレーター黒田有彩さん(㈱アンタレス代表取締役/宇宙タレント)のもと、
袴田武史ファウンダー&代表取締役(㈱ispace)や金山秀樹部長(清水建設㈱フロンティア開発室宇宙開発部)と共に、
「宇宙ビジネスの時代ーなぜ、人は宇宙に魅せられるのかー」をテーマに、それぞれの立場から宇宙への思い、魅力を語り合いました。
(以下、上村事業開発グループ長の発言を中心にレポートします。)

 

クロージングセッションに登壇した4名(左から黒田さん、金山部長、袴田代表取締役、上村G長)

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衛星データ、スピンオフで生活が変わる
宇宙旅行時代到来とともに社会は変わる

[JAXA上村]宇宙への取り組みの延長線上で、社会や人々の生活はどのように変わるかという問いですが、
いま天気予報、BS・CS放送、カーナビといまや生活の中で欠かせないものになっているように、(また今日のカンファレンスで多くの事例紹介があったように)
これからもますます衛星データはより実利的になってくると思います。
また、アポロ計画で生まれたスピンオフ商品、テンピュールであるとか、日本でも臭わない下着、人工衛星の赤外線センサ技術を活用した家庭用エアコンや人工衛星の制御技術を活用したエレベーターなど、
極限で厳しい宇宙環境下で研究開発された研ぎ澄まされた技術が私たちの生活を変えるようなことも増えていくと思います。

さらに、来年あたりからいよいよ宇宙旅行が始まると言われていますが、仮に海外に旅行する際でも衣食住、
旅行先で撮影するカメラなどいろいろと関連する商品やサービスが提供されているように、
宇宙旅行時代が来れば、海外旅行と同じように宇宙旅行に向けた商品・サービスも販売されると思いますので、
おのずと世の中の雰囲気、社会も少しずつ変わっていくでしょう。

私たちは、「宇宙は、世界を変えられる。」というタグラインを掲げて、宇宙ビジネスを民間の方と共創していますが、本当に生活や社会を変えていきたいと思い取り組んでいます。

上村俊作(JAXA)・日本橋にて民間企業等と宇宙ビジネスを共創するJ-SPARCプログラムを推進

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分からないことがあるから、分かろうとする
できないことがあるから、できるようにする

[JAXA上村]これが人類にとって進歩する原動力だと思っています。袴田さんもそうだと思いますが、私たちは人類の進歩のいちばん先端で未来を切り拓くことをしています。
切り拓く取り組みの中で、あるプロジェクトを見事にチームプレーでコンプリート、成し遂げたときの達成感というのは、なにものにもかえられない”やりがい”があると思います。

そして、誰も手垢がつけられていないところに、いち早く手をつけられることがまだあること、
先行者利益を得るという表現が正しいかわかりませんが、ゼロからイチを生み出したときの”やりがい”は確かにあります。

一方、”難しさ”は、明日すぐにビジネスを始められる、サービスインできることはなかなか難しく、他業界に比べれば、商品化・事業化、サービス提供までのリードタイムが長いということでしょうか。
宇宙空間で実証、実績も重視されるのも宇宙ならではですが、それを乗り越えてビジネスしていくことの”やりがい”もあると思います。

さらに、人類がどうであるとか、未来がどうであるとかについて一般的な企業ではあまり考える機会がないことも考えると、
そのような視点、視座で物事を考えられることは宇宙ならではないかと思います。

モデレーターを務めた黒田有彩さん・将来、宇宙飛行士を目指し様々な活動を進めている

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宇宙の魅力は『日本橋・千疋屋のパフェ』のよう
余白が大きいほど、描ける夢も大きい

[JAXA上村]”宇宙の魅力”ということですが、何種類もの大小のフルーツが美味しそうにのっている日本橋千疋屋のパフェみたいに、宇宙には多面性、多様性があるということでしょうか。
宇宙開発の目的一つとっても、科学技術、産業だけでなく、安全保障、外交、農林水産、防災、医療…教育と幅広く、
その目的に応じてプレーヤーもいろいろいます。政府、大企業、スタートアップ、投資家、法律家、コンサル…など。こういうプレーヤーと一緒に仕事(共創)ができることはやっぱり魅力的ですね。
他の業界と比べても珍しいのではないかと思います。だから、私としても、そういう様々な人たちと共創して、今以上に、厚みのある宇宙開発ができればと思っています。

また、5年前にスペースXにお邪魔する機会があり、その時の副社長(当時)が言われていたことが印象的なのですが、
「スペースXの偉業は確かに凄いと世界から評されるが、それ以上に、価値のあることは、(枯れた技術を使いイノベーションが起きにくいと思われてきた)宇宙開発で、
民間としてまだまだやれることがあることを世の中に示した、証明したことだ」と。
この言葉を聞いて、宇宙という分野はまだまだ余白が広くて大きいからこそ、そこに描ける夢、計画も大きいことも改めて実感し、それも宇宙の”魅力”だと思いました。

 

左から金山秀樹部長(清水建設㈱)・袴田武史代表取締役(㈱ispace)・上村俊作(JAXA)

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最後に、民間主導で完全再使用型宇宙機開発しているPDエアロスペース㈱にも参画している黒田氏が、宇宙への憧れや夢から宇宙ビジネスにチャレンジしていく過程で現実の壁を実感し、
その壁をみんなで乗り越えていくことが重要であることを訴え、さらに、袴田氏が紹介した「宇宙ビジネスは夢から現実、リアルのものになりつつある」という小泉進次郎氏の言葉を引き合いに、
もっと大きな流れをつくり、様々な方々と共に加速しながら「宇宙」を大きな産業として作っていくことを登壇者で確かめ合い、約40分間のセッションは終了いたしました。

[登壇後記]
直前ながらも貴重な登壇機会をいただきありがとうございました。いまの宇宙ビジネスは、金脈を探して一攫千金を狙ったゴールドラッシュに似ているとも言われますが、実は、本当にお金持ちになったのは、砂金堀りに奔走している人々にモノを提供した人だったと聞いたことがあります。デニムを売ったリーバイ・ストラウスさん、リーバイス(LEVI’S)ですね。宇宙ビジネスにも、そういうリーバイスみたいな企業、商売の方が大きなビジネスになるのかもしれず、そういう2次的、3次的な広がりを持つビジネスとしても宇宙は魅力的ですね。そういう、広がりと厚みある宇宙開発利用ができるよう日本橋から共創していきます!

【参考】
※宇宙ビジネス拠点・X-NIHONBASHI(東京都中央区日本橋室町)
https://www.x-nihonbashi.com/

※共創型研究開発プログラムJ-SPARC
https://aerospacebiz.jaxa.jp/solution/j-sparc/