2016.02.12NEWS
特集:「ひとみ」(ASTRO-H) ~宇宙を観る技術から地上環境を観る技術へ~
2016年2月17日に打上げられたX線天文衛星「ひとみ」(ASTRO-H)は、ブラックホール、超新星残骸、銀河団など、X線やガンマ線を放射する高温・高エネルギーの天体の研究を通じて、宇宙の成り立ちを調べ、熱く激しい宇宙に潜む物理現象を解明することを目的とする衛星です。
このX線天文衛星「ひとみ」(ASTRO-H)に搭載されるガンマ線検出用センサの技術は、超広角コンプトンカメラとしてホットスポットの探索など、地上で使うことのできる放射性物質見える化カメラ(ASTROCAM7000HS)に応用され、製品化されています。
X線天文衛星では、ブラックホールの周囲や星が爆発したあとに残る高温プラズマ、銀河団を満たす膨大な量の高温ガスなどから放出されるエックス線やガンマ線を高感度で測定し、高エネルギー現象に満ちた宇宙の構造やその進化を探るため、次世代ガンマ線センサ技術の開発を進めてきました。
この技術を用いて三菱重工業株式会社が地上用として応用したものが放射性物質見える化カメラ(ASTROCAM7000HS)です。
2012年(平成24年)から、早期実用化、除染の現場で活用することを目的として科学技術振興機構(JST)の「先端計測分析技術・機器開発」プログラムの下で研究開発を行い、その成果をもって平成24年度末に製品化されました。その後、福島の避難区域内で実際に測定試験を行い、良好な結果が得られています。
超広角コンプトンカメラの技術は、今後、石油、天然ガスの掘削における放射性物質が集積する場所の検出といった環境分野や、高精度重粒子線治療における精密診断の検査期間、行程の短縮化などといった医療分野への適用が期待されています。
宇宙開発における先端技術は、世界をリードする技術を生み出す可能性を秘めたシーズの宝庫です。JAXAはこれからも引き続き、最先端の宇宙開発とともに、地上用途への転用を進めてまいります。
(参考)特許第4238373号 「放射線源位置検出方法、及び放射線源位置検出システム」
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