戦前の建屋も残る工場の一角で
宇宙機器を製造・試験

日本飛行機は1934年に海軍の飛行艇や練習機の製造からスタートし、終戦間際にはロケット機「秋水」の試作も行っている。戦後は国産旅客機「YS-11」のモックアップ製造や自衛隊の戦闘機「F-15」のパイロン、ランチャーの生産などを手がけた。

最近は海外の旅客機の生産に積極的に乗り出しており、「ボーイング777」のインスパーリブ・前脚扉、「ボーイング747」の外側フラップ・主脚扉・胴体フレーム、「エアバスA380」の尾翼端などの生産を担当している。特にCFRP(炭素繊維強化プラスチック)の成形技術には注力しており、プリプレグの積層現場では、作業者が自分の手で重なり具合を確かめながら作業する。熟練した技能が要求される作業だ。

航空機・宇宙機器の生産拠点は、横浜市にある同社航空宇宙機器事業部。一部には戦前に建てられた事務棟や、三角屋根の工場建屋も残っている。宇宙機器はその一角の近代的なクリーンルームで、製造・試験が行われている。

横浜市にある日本飛行機の航空宇宙機器事業部。宇宙機器・航空機の生産拠点。

水星探査機「ベピコロンボ」に使用されるコイラブルマスト。打ち上げ時はコンパクトに収納されているが、磁気センサーを取り付けた先端部は、探査機本体の磁気の影響を避けるため、軌道上で5mまで伸ばす。

デモ用のコイラブルマスト。柔軟に見えるが、トラス構造のため伸展時は意外なほど剛性が高い。

X線天文衛星「ASTRO-H」に使用される高剛性マスト。やはり通常はコンパクトに収納されているが、6mの長さまで伸びる。名前の通り、コイラブルマストに比べ剛性が高い。この高剛性マストの先端にX線観測装置を取り付け、焦点距離を伸ばして、精度の高い観測を実現する。

高剛性マストを製造するための治具。マストが1品ものだけに、こうした治具も専用で、ASTRO-Hのマストでしか使えない(左)。デモ用の高剛性マスト。高剛性マストは太陽電池パドルやアンテナなどを広げるときにも使われる(右)。

ベピコロンボのワイヤーアンテナを組み立てているところ。金色のワイヤーがアンテナで、先端を右端の玉につなぎ、遠心力を利用して15mの長さまでアンテナを張る。ベピコロンボではこのタイプのワイヤーアンテナを2本使用する。

小惑星探査機「はやぶさ」のカプセル分離に使用した分離装置の試作品。らせん状の”バネ”を利用して分離する。カプセルにスピンがかかることで、安定した放出が可能。

航空宇宙機器事業部の航空機製造ライン。CFRPを成形加工するオートクレーブが並んでいる(左)。1938年に建てられた本館。老朽化が進み、残念ながら2012年中に取り壊される予定(右)。

日本飛行機株式会社

INTERVIEW

インタビュー

当社しかできない高付加価値の製品に
注力していきます

日本飛行機株式会社
取締役虚航空宇宙機器事業部長 相澤 康平氏
(役職、担当は平成24年3月16日インタビュー当時のものです。)

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