大震災から早期復旧を果たした現場力

NECネットワークプロダクツは1973年に、福島日本電気(NEC福島)として設立され、2000年に合併により、NECワイヤレスネットワークスとなった。そして、2011年に東北、北関東地域内に点在していたNECグループの主力工場である東北日本電気(NEC東北)、および那須塩原のNECアンテンと統合し、一丸となって難題に挑む象徴として、現在の社名に至っている。

福島市の本社工場はNECグループの通信系製品のマザー工場であり、生産を世界各地に展開する際に、同社本社工場の生産技術部隊がサポートする体制を目指している。

宇宙用機器に関わったのは、国内プロジェクト関連では、1998年に打ち上げられた通信放送技術衛星「かけはし」用通信機器の電源設計、2003年に打ち上げられた小惑星探査機「はやぶさ」用通信機器の電源生産が最初だ。その後は宇宙用通信機器の電源、固体電力増幅器(パワーアンプ)、低雑音増幅器(ローノイズアンプ)などを手掛けており、それら機器の重要な部品であるハイブリッドICの生産に力を入れている。

2011年3月11日の東日本大震災では宇宙用通信機器を生産するクリーンルーム内のラインへの影響や、停電/断水のため空調が止まるなどの被害を受けた。しかし一般の機器については3月14日には生産を再開、宇宙用通信機器は震災の影響と対応処置について納入先であるJAXAや、国内外の人工衛星システムメーカの承認を得た上で、19日後の3月30日には生産可能な状態までこぎつけた。

震災直後(3月11日)のクリーンルーム内(左)と復旧後(3月29日)のクリーンルーム内(右)。この後、最終確認を行い、3月30日には生産可能な状態となった。

福島市にあるNECネットワークプロダクツの本社工場。NECグループの通信系製品のマザー工場と位置付けられている(左)。宇宙用通信機器の主要部品であるハイブリッドICの組み立てライン。クラス1万(Fed.209D)のクリーンルーム内で製造する(右)。

熟練作業者が設計者の意図通りの特性を引き出すために素早く正確にチップを配置していく。

チップと基板間の接続のためのワイヤボンディングもマニュアル機を用いることで、高周波特性を極限まで追求する。技能検定で合格した作業者のみが担当できる(左)。組み立てたハイブリッドICの電気的特性を測定しながら調整する(右)。

1μmほどのゴミの付着も許されない。顕微鏡での確認作業に集中する(左)。ハイブリッドICの組み立てを担当する菅野瑞子さんは、NECグループ優秀技能者として2011年に表彰された(右)。

宇宙用通信機器の組み立てライン。作業を流れ化して生産効率を向上した。

完成した宇宙用通信機器は小型の真空チャンバー(左)や振動試験機(右)を用いて、宇宙空間、ロケットの打ち上げを模擬した試験を行うことで、環境適合性を確認する。

NECネットワークプロダクツ株式会社

INTERVIEW

インタビュー

高度なスキルを持つ作業者が
宇宙用ハイブリッドICを
究極の性能に仕上げています

NECネットワークプロダクツ株式会社
開発部エキスパート 小川 文輔氏

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