徹底した清浄度管理と公差ゼロへの努力

人工衛星に搭載される機器にとって、もっとも大切なのは信頼性の高さ。故障したからといって直しに行くことができないからだ。

その宇宙品質のリアクションホイールのキーパーツとなるベアリングの組み立てをしているクリーンルームを見学してきた。
三菱プレシジョンでは、ベアリングの信頼性を高めるために、メーカーから購入したものを分解して洗浄した後、様々な特性を確認しながら組み立てていく。

ベアリングを10年20年と長期間の信頼性を担保するのは、ひとつはコンタミと呼ばれるゴミの除去。使用されているベアリングボールで最も小さいものは直径約1mmで、ミクロンレベルのわずかなゴミの付着が性能を左右する。

もう一つは潤滑油の量。潤滑油が多過ぎるとベアリングの回転抵抗が大きくなってしまい、少なすぎると摩擦で劣化が進むからだ。

そのため、管理された環境でゴミがないこと、正確にオイルを塗布することが大切なのだ。

クリーンルーム「クラス100」。作業員が細かな作業に集中している。

顕微鏡を覗きながらベアリングのボールに、極細の注射器のようなもの(マイクロシリンジ)を使って、手作業でマイクロリットルレベルのオイル量を正確に調整。

ジャイロの取り付け面に対して、ベアリングが平行に、かつ軸が垂直に組み立てられているかを確認する作業。許される誤差は、ミクロンレベルと規格も厳格。

組み立てられたベアリングを回転させ抵抗力を計測することで、組み立てにエラーがないか、内部にゴミがないか、潤滑油の量が適正かを確認する。

完成したベアリングを一定の時間、所定の回転数で回し続ける慣らし回転により、ベアリングの状態を確認する装置。大気中で回転させる装置のほか、真空下で回転させる装置もある。

部品の洗浄に使用する洗浄液を作るステーション。洗浄液も濾過してから使用している。ガラス器具もゴミの発生しない石英100%の特別なものを使用している。

リアクションホイールに実際に使われている6kgのローター単体。表面を鏡面仕上げにすることで、ゴミの発生・付着を防いでいる。横穴は、バランスの最終調整に使用するねじ穴。中央のシャフトの上下をベアリングで支え、ローターの回転速度を変えることで衛星の姿勢を変化させるのだ。

衛星姿勢制御機器に使用されている部品。非常に小さなベアリングが組み込まれている。

『現代の名工』に選ばれた笠原正弘さん。リアクションホイールの部品を旋盤加工しているところ。素材の熱膨張を考慮した加工寸法設定や、変形を考慮した取り付け方法など、長年の経験で培われた職人技で同社の宇宙品質を支えている。

三菱プレシジョン株式会社

INTERVIEW

インタビュー

宇宙開発に関わって50年以上の歴史を誇る、
日本の先駆的宇宙機器企業。
人工衛星の姿勢制御をつかさどる
純国産のリアクションホイールを開発!!

三菱プレシジョン株式会社
取締役 鎌倉事業所長 安井 訓氏

三菱プレシジョンの宇宙開発に関わる歴史は長い。日本初の人工衛星「おおすみ」を打ち上げたロケットに搭載された姿勢制御装置を始め、人工衛星、宇宙ステーション、ロケットなどに数多く同社の宇宙機器が搭載されている。現在、純国産の大型リアクションホイールを作ることのできる唯一の会社だ。同社のこれまでの歩みと、信頼性の高い宇宙機器開発の苦労などについて伺った。


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