原料精製から実装まで行う、 世界唯一のCdTe放射線検出器メーカー
2015年度に打ち上げ予定のX線天文衛星「ASTRO-H」には、先進的な観測機器が多数搭載されているが、この製造に携わった企業が沖縄県うるま市に存在する。テルル化カドミウム(CdTe)半導体放射線検出器の開発・製造を行う、株式会社アクロラドだ。
原料であるCdとTeの精製からCdTe素子のSi回路との実装まで一貫して行う点が特徴であり、当該検出器を扱うメーカーの中では、世界で唯一、利益を出している。
検出器に使われているCdTeには、従来使用されてきたシリコン(Si)やゲルマニウム(Ge)に比べ、放射線の検出効率が高く、かつ室温での動作が可能という利点がある(例えばGeの場合、-196℃の液体窒素を使う冷却装置などが必要である)。また、密度が高いため、薄くても十分な検出が可能な点も特徴で、普通のX線であれば1ミリ程度の厚さで十分に検出することができる。
アクロラドの強みは、このCdTeの高純度・高抵抗・大型の結晶の製造技術を確立した点である。それを支えるのは、20年以上にわたる研究により蓄積された、膨大なノウハウである。どのような条件下であれば結晶成長が上手くいくのか。電極はどのように形成すれば良いか。特許情報や論文からは読み取れない無数のノウハウが、アクロラドの品質を支えている。
女性の指先の爪ほどの大きさの、小さなCdTe素子とシリコン回路それぞれに、100マイクロメートル間隔で並んだ、3万個のピクセルが存在する。互いのピクセルがぴったりと重なるように、CdTe素子とシリコン回路を重ね、二層のハイブリッドにする。
会社設立から11年間は赤字が続き、最大で13億円の累積赤字を抱えたこともあるという。政府や沖縄県からの補助金や投資家の融資も受けつつ、12年目には黒字化を達成した。今後は工場を拡張し、量産化を目指す予定だ。
ゾーンリファイニング装置などを使い、カドミウム(Cd)とテルル(Te)の純度を、99.99%からさらに99.9999%の高純度にまで高める。その後、結晶成長装置(THM法)にてCdTe単結晶を成長させる。製品化に必要な大きさの結晶になるまでには1月以上の時間が必要だ。
円柱状に成長したCdTe単結晶は、用途に合わせて厚さ0.5~3ミリのウェハー状に切り出された後、装置で鏡面研磨され電極形成が行われる。最終段階では、例えばピクセルに欠けがないかなど、人の目できめ細やかに、検出器の品質・性能チェックが行われていた。
株式会社アクロラド
INTERVIEW
インタビュー
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株式会社アクロラドCEO兼代表取締役社長 大野良一氏