ターボポンプ用のシールは
クリーンルーム内で最終検査を実施

イーグル工業はメカニカルシール、すなわち金属製シールを主力とするメーカー。ゴム系に比べ、高温や低温など厳しい温度環境に強いことが特徴だ。ゴム系のオイルシールメーカーである日本オイルシール(現NOK、フレキシブルサーキットのメーカーでもある)がメカニカルシールの開発に着手したのが1956年。1964年には米国のシールメーカーであるシールオール社と合弁で日本シールオールを誕生させた。メカニカルシール部門の分離独立という形で生まれたこの会社こそイーグル工業の前身である。1978年に現在の社名に変更、その後米国との資本関係も解消し、現在はNOKのグループ会社である。

最大の顧客は自動車産業。エンジンやカーエアコンなどに使うメカニカルシールやベローズ、バルブなどを供給しており、世界シェアはウオーターポンプ用シールで65%、コントロールバルブで70%、リップシールに至っては90%を占める。石油化学産業では大型コンプレッサーに使うガスシール、プロセスポンプのメカニカルシール、エネルギー産業では発電機用ガスタービンや蒸気タービンに使われるシール群、半導体産業向けの真空シール、また船舶用のスクリューシャフトのシールなど、ありとあらゆる産業で不可欠な存在となっている。国内全体でのメカニカルシールのシェアは70%を占める。

一方、航空宇宙事業部は、売り上げの半分近くをジェットエンジン用から応用したブラシシールなど地上用ガスタービン向けが占める。それでもジェットエンジン用のシールは国内で生産する防衛省向けエンジンの100%に供給しており、国産ロケットのターボポンプシールもすべて同社が担っている。

航空宇宙事業部は、埼玉県坂戸市の埼玉事業場にある。ベローズなどの一部製品を除き、技術開発から、設計、製品製造までを同一事業場で行う。埼玉事業場の全従業員242人中、航空宇宙事業部の従業員は114人。このほか、東京、名古屋、神戸に数人ずつ航空宇宙事業部の営業部隊が常駐する。

宇宙用部品は汎用工作機械を多用するが、生産する個数が少ないため、同じ機械で同じものを作る続けることはなく、次々と製作するものが変わる。また、全数検査をはじめとした非常に厳しい品質管理体制を敷いていることも大きな特徴だ。特にチリを嫌うロケットエンジンのターボポンプ用シールは、専用のクリーンルーム内でクリーン洗浄や最終検査と保管を行う。

埼玉県坂戸市にあるイーグル工業の埼玉事業場。航空宇宙分野の製品の生産拠点だ。

宇宙用の部品は生産個数が少ないため、汎用の工作機械で製造する。左は研削盤、右は旋盤。

ブラシシールなど、複雑な形状のメカニカルシールはワイヤー放電加工機(後方の機械)で製造する。手前は加工した部品を検査しているところ。

ニッケル基合金やチタン合金製のシールケースは、真空炉で熱処理して強度を高める。

精密測定室。3次元測定機や画像測定機を用いて、完成した部品の寸法を高精度に測定する。年間を通して同じ温度と湿度に管理されている。

高速回転試験機。実機条件を模擬してメカニカルシールの検証試験や耐久試験を実施する。400℃までの高温環境と、最高5万rpmの速度で回転させることが可能だ。

ロケットエンジンのターボポンプ用シールは、クラス10万のクリーンルーム内で検査する。写真は荷重試験の様子。

溶接が必要な宇宙用部品は、わずかなチリでも溶接部に付着することは許されないため、クリーンルーム内で溶接する。この溶接機は自社開発したもの。

完成したターボポンプ用シールはクラス100のクリーンベンチに保管する。

生産個数の多い航空機のエンジン用シールの製造にはロボットも使用している。

シール材料の研究用にSEM(走査型電子顕微鏡、左)やEPMA(電子線マイクロアナライザー、右)といった分析装置も備えている。

航空宇宙事業部技術部の設計室。埼玉事業場には設計や製造、品質保証など、114人の航空宇宙事業部の従業員が勤務している。

航空宇宙事業部の主要メンバー。左から松本洋志副事業部長、井口徹哉技術部部長、中島正行製造部部長、村上昌也航空品証部部長。

イーグル工業株式会社

INTERVIEW

インタビュー

日本の液体ロケットエンジンの
メカニカルシールは
当社が供給しています

イーグル工業株式会社
航空宇宙事業部技術部長 井口 徹哉氏

RELATED

関連記事